これまで何があったとか、これから何が起こるかとか。
はっきりさせる事、はっきりさせなければいけない事。
何だか大量にあるわけだけれども。
でもたった一つの事実、あの時俺が拾ったのは―――。
夜中、何だか窮屈な呼吸に意識が浮上した。
動けない。
でもその正体は酷く判り易い。
男の癖に、オスの癖に、俺と結婚するとか馬鹿ほざいた人外の者が、俺をしっかりとその胸に抱いて眠っているからだ。
軽く身を捩れば、うにゃうにゃ言いながらますますしがみ付いて来る。
苦笑する俺の背に、ぽんぽんと宥めるような小さな刺激。
そしてしがみ付いてる男を諌めるような、白く長い物が視界に映る。
ちょっと視線を枕上に上げると、そこに白い猫が丸くなっている。
ちょっと首を捻じ曲げて背中を見れば、布団の上に焦げ茶色の猫が伸びている。
いつも抱き締めて眠っていた俺の猫は猫の姿をしてなくて、俺を抱き締めて眠っている。
あの時俺が拾ったのは一匹の猫。
色々あって今では三匹に増え、しかも猫と断言しにくいものだとも分かったけれど、それでも確かな事は。
俺はもう、この三匹に囲まれた状況でなければ安眠出来ない、という事。
小さく震えていた仔猫に、何時の間にか安らぎを覚えていた、という事。
厳しく優しく補佐してくれる青年を頼りにしている、という事。
俺をガキみたいに撫でる大きな手を持つ青年に寄りかかっている、という事。
優しく響く三つの寝息に、すりすりと擦り寄る大きな猫の温もりに、微温湯のような幸せを感じながら、俺も再びまどろみの中へと戻る。
どうせまた明日は一騒動あるだろう。
予定は無いけれども、こいつ等やこいつ等の一族は毎日やってくるから。
その度に色んな事があって、以前はきっとそれを煩わしいと思ったんだろうけど。
でも、今は。
猫たちに心の中でお休みをいい、瞼を閉じる。
お休み、また明日。