翌日学校で、俺を見たとたん青子が素っ頓狂な声をあげた。
「右手どーしたの!?」
「ん〜? ちょっとな」
俺がどれだけ手を大事にしてるかを知ってる青子の問いに、俺は満面の笑みだけ返してやった。
「いやらしい笑い方しないでよ」なんて言われたけど、気にしない♪
右手の包帯を見詰めながら昨夜を思い出す。
『服部や白馬なんかが知ったら、きっとすげぇ非難されるんだろうな。犯罪者相手に何してる、ってさ』
そうでしょうね。特に西の探偵は、正義感がお強いようですから。
『でもまあいいか。………右道に走ったって事で許してもらおうかな』
そんな言い方をしても彼に解りますか?
『あいつだってその位の知識あるよ。あんまり侮らない方がいいぜ?』
御忠告ありがとうございます。しかし、右道とはまた……。
『だってそうだろ? 誓いは右手によって成されてるんだから。倫理を外れるって意味でも、十分だと思うけど』
倫理、ね。
思わず笑うと青子が顔を顰めた。
はいはい、すけべったらしく見えるんだろ? 分かってるって。
だってさあ、昨夜の名探偵ってばすげー綺麗だったんだよー?
血に濡れた手を舐めながら時々俺を見る目なんて無茶苦茶流し目って感じでさ。
うはーvv 思い出すとぞくぞくするvv
あの目に見られる為なら、俺一生KID続けたいかもーv
ってのは冗談だけどさ。
にやにやしてる内にチャイムが鳴った。
さて、これから忙しくなる。
警察に分かるギリギリで、あいつが満足できるような暗号も考えなくちゃいけないし。
それに俺がどうなろうと構わないとは言ったけど、俺を捕まえないとも言わなかった。
ギリギリの関係。
薄い氷の上で踊るような、危うい遊び。
こんなに楽しい事ってないよ、マジ。
まさかこんな事を楽しめる相手がいるなんて思わなかったし。
おっさんには悪いと思うし、白馬の相手もしてやるさ。
でもそれ以上に。
あいつとのゲームがこんなにも俺のやる気を擽ってる。
全力で渡り合える相手に恵まれる事ほど幸せな事もない。
まるで対照的な立場にあって。
なのに鏡に映ったみたいにそっくりな俺達。
天災という属性を持つ、天才。
さあ、楽しもうぜ名探偵。
常識なんてもの全てを薙ぎ倒して、振り回して、破壊し尽くすくらいに。
今それが出来るのは俺達だけなんだから。