「それ」は待っていた。
待ち続けていた。
呼び続けていた。
長い、長い時間を。
(滅びの御子)
枯れた声。
(我が王)
枯れた腕。
(愛しい贄)
木枯らしのような嗤いを漏らし、
それは囁く。
(怯え故に死す事叶わず)
(怒り故に死す事叶わず)
(誇り故に死す事叶わず)
(願い故に死す事叶わず)
(その瞳は水よりも美しい)
(その髪は闇よりも美しい)
(その肌は月よりも美しい)
(涙は甘露の如く我を潤し)
(声は涼風の如く我を慰め)
(指は燈火の如く我を暖め)
(血は大樹の如く我を包み)
くわ、と見開く目は枯れて。
昏き朱が唯、有るのみ。
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、来よ)
(疾く、)
(疾く、)
(疾く、)
(有にして、無)
(死にして、生)
(我が王)
(我が器)
(不死の王)
(永遠の支配者よ)
(疾く、来よ)
(疾く、)
それは待ち続ける。
時はただ過ぎ行く。
運命の糸は、遥か流れ。
始まりの時を誘う。
闇へ。