「…………コーラルじょう?」
「あぁ。カイツール――マルクト帝国との間にある関所だな――の傍に、公爵様の所有する別荘があるんだ。そこがコーラル城。ルークはそこで見つかったんだって聞いたよ」
「……こーしゃくさまの、……しょゆー…?」
「分かり難かったか。ルークのお父さん、父上様の持ってるおうちの一つだってことさ」
「………ちちうえの、おうち?」
「そうだ」
***
「なー、ガイ」
「何ですか、ルーク坊ちゃま」
「お前さ、俺が見つかったのはコーラル城だって教えてくれたよな」
「ん、ああ……そうですね。良く覚えてらっしゃいましたね」
「馬鹿にすんなヘタレ使用人。ってか言いたいのはそこじゃぬぇ」
「ヘタレって……………で、それがどうかなさいましたか、坊ちゃま?」
「口調変えろ」
「はい」
「父上とも話したんだけどさ。俺が見つかったのがコーラル城なら、何で謡将が見つけられたんだろうって思ったんだよ」
「は? そりゃ探してたからだろ?」
「それ自体はおかしくねぇけど…っていやそれすらおかしいと思わね?」
「何が」
「だって、幾ら剣術の師匠だからって、そんな国家レベルの話に首突っ込むかって事だよ。しかもメジオラ大陸とかのキムラスカ領近辺ならまだしも、互いを監視してるカイツール近隣までわざわざ足伸ばしてさ」
「緊張状態が続いてるからこそ、中立であるローレライ教団の人間が行った方がいい、って事なんじゃないか?」
「だけど、ローレライ教団の関係者がファブレ公爵の別荘近辺をうろつく方がおかしくねぇ? 何か預言によってあるのかもって勘ぐりだってするだろ、それ」
「うーん……」
「それに、父上の許可なく入る理由もない」
「…… お前を探してたから入ったんじゃ」
「馬鹿いうなよ、放置されてるとはいえあそこはキムラスカの公爵の持ち物だぜ。父上に聞いたらそういえば許可は出してないって今更慌ててたし」
「いや、だから」
「俺を探してたからって、公爵の別荘に一言の断りもなく他国の軍人が入っていい訳ねぇだろ。そういう場合は断りを入れて、許可を待って入るもんじゃぬぇの。許可が出ても、立会人を求めるとかさあ」
「……緊急事態だし、そんな事も」
「緊急事態だからこそそれだけの配慮が必要だろって事だよ。第一緊急事態だから入っちゃいました、ご子息が見つかったからお咎め無しでおっけーですよね、じゃあ、火事場泥棒だって許されちまう。その後の謝罪だってない。気が急いて入ってしまったって謝罪入れたならまだしも、謡将はそのことについて一切触れてない訳だしな」
「………」
「どうも気に食わないんだよな、その辺りがさ。父上も何か考えてたし…………ガイ?」
「…………」
「……… ガーイ」
「…………」
「……………クス」
***
「聞いたかガイ、コーラル城の話。あ、口調変えろよ、気持ち悪ぃから」
「…はぁ……はいはい。…いや、聞いてない。騎士団が調査に向かったって話は聞いたけど」
「あー、父上が口外無用とでも命じたかな。流石うちの騎士団、口が堅ぇ」
「だからどうしたんだよ」
「何か父上も知らない隠し部屋が見つかったとかって」
「何だそりゃ。そんなの何処の城だってあるんじゃないのか?」
「隠し部屋とか通路自体は元からあったし別に問題ないらしいんだけど、その途中で明らかに近年に人の手が入った部分を見つけたんだそうだ。しかもご丁寧にどでかい譜業装置が設置されてたとか」
「譜業!?」
「取り敢えず最後まで聞いてからな、譜業オタクうずうずすんな気持ち悪ぃ。話続けるぞ」
「あ、ああ」
「ホド戦争からはずっと放置状態だったからな…少なくとも14年はそのままだったはずだ。それまでは母上が頻繁に出入りなさっておられた訳だし。だけど今回見つかった隠し部屋は、それ以降に作られた―――置かれた譜業装置に使用されてる部品が、結構有名なやつなんだそうだ、確か、HK型の――」
「HK04483- AS200メ型か!? もしかしてタイプH-0994!? 譜業装置に革命を呼んだっていうあの!!?」
「うっわ何か火がついた」
「いいかルーク、HK04483-AS200メ型はND2009年にシェリダンの技師が開発した駆動装置でな!? それまでの駆動装置に比「黙れ☆」ぶべぐっ」